殺人とは?偶然が人生を描かせる
一人の男は見習い弁護士で最後の面接を受けている。
……そして受かった。
一人の男は無愛想で不機嫌なタクシー運転手。
いつものように自分の車を洗車している。
仕事にやりがいとかプライドとかはまるで持っていない。
毎日が人生が、不平不満のかたまり。
もう一人の男は目的意識を失った青年。
何が楽しいのか、何を求めて生きていくのか、どうしたら充実した人生を送れるのか、
など全く考えることもなく、無気力で街をさまよい歩いている。
まったく接点のない3人の男がいる。
が、たまたま無気力な青年が無愛想なタクシーに乗ってしまった。
最初からそのつもりではなかったが、衝動的にそのタクシーの運転手を殺して、タクシーをかっぱらい、好きな女の子の所にタクシーで行って、喜ばせようとする。
やがて青年は逮捕され、死刑の判決が下る。
その弁護士を勤めるのが、見習いから合格した成りたての弁護士だ。
法の名の元に青年が死刑になる迄、弁護士は青年と関わることになる。
死刑もまた暴力である。
例え青年が殺人犯であろうと、法の名の元で行われる殺人で、これがも実は暴力に違いない。
加害者がやがて被害者になる。
これも暴力であり、加害者を扱う立場の人間ですら、死刑という判決を退けられず、加害者となってしまう。
そう、この映画のテーマは「暴力の行使」以外の何も
のでもない。
感傷を極力排した冷たい映像が、青年が亡くした妹の話。
弁護士になりたての人間の背景を描くことによって、「暴力の行使」をより観客に潔く考えさせていく。
偶然の3人の出逢いが、3人の運命を狂わしていく。
映画「殺人に関する短いフィルム」
(1987・ポーランド作品)
監督/クシシュトフ・キュシロフスキ
出演/ミロスワフ・パカ、クシシュトフ・グロビシュ/他
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