SF、アクション、ホラーなどとは次元が違 うテーマで、野性的で人間的で哲学的である
冬の寒い、陰気な路地の夕暮れ時。
独身男のセリグマンがケガをして倒れている
女性、ジョーを見つけ、自宅に連れ帰り介抱
する。
熱いミルクティーを飲んで、少し元気の出た
ジョーに、「一体何があったのか?」と質問
を始めたセリグマン。
ジョーは話せば長くなるが、と子供の頃からの"性"についての話を始める。
「幼い頃から性への欲求が強かった。
初めての体験は…」と、映画は色情狂(ニンフォマニアック)の実に多い男性経験の告白と性に関する様々な考察や洞察が語られていく。
ある時は医学的、哲学的、そして宗教的な範疇に迄およんで。
ユーモラスに聞こえてくる話があったり、カルトチックな体験が伝わってきたり、映画はぐいぐいと観る者を引き込んでいく。
監督と脚本はラース・フォントリアー。
2009年の「アンチクラスト」、
2011年の「メランコリア」に続くトリアーの
『鬱三部作』の最終作が、この「ニンフォマニアック」だ。
素晴らしい役者が揃った。
欧米各賞のノミネートの常連になっている
シャルロット・ゲンズブールが主演女優。
「アンチクライス」ではカンヌ映画祭の女優賞を獲得。
父はセルジュ・ゲンズブール、母はジェーン・バーキン。
芸能一家に生まれ、女優・歌手としても活躍、今、49歳だ。
若かりし頃のジョーを演じるのはイギリスの女優で今、27歳のステイシー・マーティン。
そしてこの独身男の役が出来るのは、この人しかいない、という演技派ステラン・スカルスガルドが好演。
スウェーデンの俳優で今69歳。
「ドラゴン・タトゥーの女」に出演した役者と言えば、解かるかな?
この「ニンフォマニアック」は2014年の10月に、日本では8館のみで公開された。
主人公のジョーの父親は医者で、冬の木が「木の魂」であると話してくれ、子供時代に何度も冬の森に連れていった。
確かに冬の木は葉を落とし春を待つ、生命力の源である魂を感じさせる。
こんな哲学的な描写もある故に、あなどれない官能作品となる。
この作品は色情狂の女性の話ではあるが、奥の深い会話には、"学ぶ知恵"もたっぷり含まれている。
東方教会と西方教会の話も出てくる。
バッハの音楽の素晴らしさも教えてくれる。
映画は二部構成からなる。
現実に起こっているようなSEXの様々なあり方を、この主人公はすべて体験してしまう人生を送っていく。
それほど経験豊かで面白い話が次から次へと飛び出してくる。
それは脚本の素晴らしさだ。
とんでもないドンデン返しの展開が最後は待っている。面白いし、為になる2人の会話は時間を長く感じさせない。
映画「ニンフォマニアック」
(2013年デンマーク・ドイツ・フランス・ベル
ギー・イギリス合作)
監督/ラース・フォン
出演/シャルロット・ゲンズブール、ステイシー・マーティン、ステラン・スカルスガルド、他
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