映画の脚本がいかに大切か、それが映画に生命力をもたらす

映画を観ていると、時たまオモシロい!!というセリフ(字幕の訳し方が上手いのだ)がある。

特に最近はフランスやポーランド、スペインの映画を観ているからか、そんな場面に出逢うことが多くなった。

例えばポーランド映画、キェシロフスキ監督の「殺人に関する短いフィルム」では、登場人物の個性が、とても上手に描かれている。

役者もウマいが、セリフが生きいきしている。

意地の悪いタクシーの運転手は、本当に神経質で意地の悪い演技を見せてくれるし、その表情とセリフと、その言い回し、話し方も、すべてが、どうにいっているのだ。

ノラ犬を見つけて、タクシーからサンドイッチを鞄から出して、犬に語る。
「ホラ、喰うか‼うちの女房が作ったんだゾ。喰え!しっかり喰え」。
サンドイッチを投げると犬がパクパク喰っているのを眺めて満足そうにニタリとする。
(この運転手はその後、若い男の客を乗せ、首をしめられ殺されてしまうのだが)
犬に「女房が作った」というカ所が面白い。
で、この殺人を犯してしまう青年が映画館に入るシーンが冒頭にある。
そこでキップ売り場の女性に「この映画、面白い?」と聞く。
その女性は白髪を一生懸命に抜いていて、この青年が話しかけてきても一向にやめる気配がなく、(つまり青年を全く無視しているのだが)「たいして面白くないよ」と返事する。

青年が不思議そうに「何してるの?」と聞くと、恥ずかしげもなく「白髪を抜いてるの」と答える。

この会話のやりとりは、とてもセンスがあって面白い。

キェシロフスキ作品には、出演者の個性の浮かび上がらせ方が、実に見事だ。
俳優も実にピッタシで、役者が役に成りき切るのが上手で本当に実在する人のように映っている。

まるで絵に描いたように、だ。
セリフも作られているのだが、日常的に感じて、流れるように進む。

今度はスペインの映画で刑事2人が殺人犯を追いかけ、捜査している間のセリフだ。
妻も恋人もいない片方の刑事に、家庭を持つ刑事がしゃべる。
「女がいないとつまんないだろう。誰かいないのか?」と聞く。
相棒の刑事は「いっぱいいる、売春婦がいっぱいいるから」と真面目に答えるシーンがある。

いっぱいいる、確かに。だが売春婦だ。
そして理屈は合っているが、次元がユニークで面白い会話として成立している。

フランス映画の犯罪モノで、主人公の男がやっかいになっている女を連れて、カジノにメシを喰いに行くシーンがある。

カジノはスーパーカーで乗り付けたせいもあり、そこの警備員がさっと車に迎えに来て、一流のサービスでもてなす。

そこは賑わいを見せている。そして女性も多く、が、みんな派手なファッションでウロウロしている。

女が男に「派手な女の人が多いね」と話しかけると、男は知りもしないのに「売春婦だ!」とさり気なく答える。

こういう会話を成立させるのが、映画におけるセンス、味として必要なのだ。
と感心できるから面白い、男と女の関係が、この会話により測れるのだ。

ポーランド、スペイン、フランスの映画におけるセリフ、いや~、面白い。

Oimachi Act./おい街アクト

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