弘田三枝子の回想⑤ 今迄にない挑戦に弘田さんも殺気をはらんでやってくれた。
ジャズ・ライヴ盤を制作するにあたって、僕はかなりの宿題を弘田三枝子に与えた。
「今迄にないアルバムを作りたい」この気持ちは弘田さんにも理解された。
例えばグレン・グールドのピアノのCDを沢山送り、聴いてもらった。
その中にバッハのアリア「罪に逆らうべし」をどうにか再現したいという注文を出した。
弘田さんも、このアリアがとても気に入っていて、これにラフマニノフの「ヴォーカリーゼ」と絡ませて進んでいく作品に挑戦したいという意欲が生まれた。
実験的な試みをクラシックの世界から持ち込もうとしたのだ。
これを北九州には3週間滞在していた間、田部さんらとリハーサルを何回も繰り返した。
そうして、これをどう組み込むか?
懸命にチャレンジしようと弘田さんも頑張ってくれた。
「ヴォーカリーゼ」は音域の広い音楽で、チェロで演奏したものを聞くと、歌の主旋律がとても不安定になる。
残念ながら、これを入れることは断念した。
そうして弘田さんの曲「ア・ウーマン・アム・アイ」が録音されることになった。
このアルバムにかける弘田さんの意気込みは殺気じみたものがあったし、メンバーの田部さん他、皆さんもこのライヴは共演ではなく競演になるという予想がたった。
こうしてリハーサルは過ぎていった。
今日はバッハのアリア「罪に逆らうべし」を聞いてみよう!
0コメント