彼は年下からも年上からも、女性にも男性にも好かれた子供として育った。

年下の女の子に、その彼は小さい頃から好かれていた。
記憶に残っているのは彼が小学校5年生の時だ。
小学生1年生の自習の時間に監督としてクラスから2人選ばれた。
 
小学校1年生の男の子も女の子も、お兄さんが好きなんだ。
 
お兄さんがいる子もいるだろうが、それでも実のお兄さんとは違うのだろう。
他人の"お兄さん"にあこがれるのは、男の子も女の子もありがちなのだ。
 
このある種のコミュニケーションは、学校に通う小学校1年生にも、そしてお兄さん扱いをされる小学校5年生にも、ひとつの学校での楽しみになっていく。
 
ある日、その彼が友達とウサギ小屋でエサをやっていた時、受け持ちのクラスの1年生の女の子が、「お兄さん!」と言って近づいて来た。
 
髪の毛が長く、1年生にしては体格がいいし、顔立ちもはっきりしている。
自習の時にはチラっと目が合うことはあっても、話したことはなかった。
 
その彼女が去り際に、お兄さん!と言って"投げキッス"をしたのだ。
 
友人と顔を見合わせて笑いが彼にも出た。
 
「投げキッス」が目新しいカルチャーとして登場した昭和の時代だった。
 
クラスの男の子からも女の子からも、人気があったことから、彼は15歳の時に小学校5年生の友達の妹を可愛く思った。
その妹はかなり本気で彼を慕っていたようで、その仲の良い関係は、その彼女が高校になっても続いた。
道で会うと顔を真っ赤にして挨拶した。
 
彼女は純情な高校生として成長していた。
 
彼はすでに純情な自分を否定していたが、彼女に会うと、姿勢が正されるのであった。
 
今日はハーマンズ・ハーミッツで「ワンダフル・ワールド」を。

Oimachi Act./おい街アクト

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