おそらく一万人に一人の女の子だったと思う。
「まあ~、カワいい!女の子みたい」こう言って僕の座っている席の前のイスに座り、こちらを向いて話かけてくるのだ。
その女の子は全校で一番の美人、可憐、賢い、細身で足が長くスタイル良し、ファッション・センスあり。
そんな女の子から気に入られてしまった。
これは小学校5年生の時の学芸会の催し物。いわゆる和製ショート・ミュージカルの役者選びのための集まりでの出来事だった。
2つの演題があり、彼女は「花咲かじじい」。
僕は「稲葉の白兎」に決まった。
この女の子はまるで芸能人、"芸人"のような身のこなし、キレの良い動作、軽い足取り、表情は真顔でキメている。
舞台での彼女は別人のように、自分の世界に入っていた。
「天性の芸人」という言葉があるなら、彼女をそう呼ぼう。
クラスが違うので、たまに廊下で会ったりはした。
5年生の運動会、「オクラホマ・ミキサー」という曲でフォーク・ダンス。
6年生が冷やかす。
このフォーク・ダンスで「天性の芸人」との組み合わせが回ってきた。
オーバーな言い方をすれば、こちらが何もしなくとも、すべて彼女がリードしてくれる…。
ダンスの講師のような人だった。
"高値の花"というにピッタリ(僕にしてみれば)の、スター並みの容姿と踊りと才能と、その芸に対する入れこみ方…。
中学、高校とお嬢様学校に進学したまでは聞いている。
普通に結婚したとは思えない。海外生活を送り、役者となったか、あるいは外人と結婚したか、そう考えないと辻褄が合わない女の子だった。
「ねえ、名前教えて!」「何組?」。
僕は「イヤ!」と言ったのだった。
今日はビージーズで「若葉のころ」を聴いて下さい。
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