ある夫婦の会話
昭和30年代の話し。
会社が倒産して1年近くになる。
未だ仕事の決まってない夫は、借金の肩代わりにテレビも持っていかれ、新聞をとるお金もない。
暇つぶしは靴磨き。
ピカピカになるまで磨きあげる。
借金取りが朝から来たりするので、家庭は今は崩壊している。
妻は服の補正の仕事をしているが、日給は300円。
朝、飯は辛うじて味噌汁に漬け物と目刺し。夫は妻に嬉しそうに話す。
「今日はプロレスでも見に行くかな」。
すると妻は、「そんなお金、どこにあるんかね!」。
夫は、吃った感じで「プロレスち言うても、散髪屋のテレビを見に、い、くん、よ」。
妻は不機嫌で、黙っている。
こうして朝の食事は終わった。
昭和30代、プロレス人気は、街頭のテレビに人だかりが出来ていた。
むろん床屋のテレビを近所の親父達は見に来ていた。
そう、力道山対プラッシーは、額を噛みつかれた力道山が血を流し、テレビを見てショック死する人もいた。
プロレスが本気でやる格闘技と、しばらくは信じられていた時代。
日本人は本気で怒っていた。
「えークソ、反則ばっかり外人はして!チェっ!」。
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