クラシックと映画の相性が、映画の評価をも決める
映画のための音楽かと思っていたら、クラシックを映画の中で使っていた、という勘違いをすることがある。イタリア映画の「ベニスに死す」ではマーラーの交響曲第五番の第4楽章が使われた。サントラ盤を探した結果、それがクラシックであったことを知る。それからクラシックのファンになる人も多い。ロバート・レッドフォード監督の映画「普通の人々」では、ヨハン・パッヘルベルの『カノン』が効果的に流れた。「愛は静けさの中に」では、バッハの『2つのバイオリンのための協奏曲』が。
イギリス映画の「逢引き」に用いられたラフマニノフの『ピアノ協奏曲第二番』は、映画のために作られた曲のように、映画を盛り上げている。ストーリーは、偶然知り合った人妻が医者と恋に落ちるが、結局は結ばれることなく別れて、夫のもとに帰っていく、といった内容。ラフマニノフのロマンチックで哀愁あふれる名曲が、男と女の”愛と別れ”の切ない心の流れにピッタリと合って、これぞ映画のための音楽と言わんばかり合致していた。
ラフマニノフはピアニスト兼作曲家で、ロシアの貴族の息子として生まれる。ピアノ協奏曲第一番は、彼がモスクワ音楽院を卒業する年に完成され、ピアニストとして活躍しながら次々と作品を発表してロシアにラフマニノフの旋風を巻き起こす。が、24歳の時に発表した交響曲第一番が、音楽評論家たちから酷評を受け、そのショックで自信喪失してノイローゼになってしまう。(彼が完治したのは催眠療法によると伝えられている)
ピアノ協奏曲第二番は、彼が28歳の時に発表された作品。晩年はロスアンゼェルスに住み、ロシアに帰ることを夢見るが、果たすことができず、70歳の生涯を終えた。死因はガンであったと伝えられている。
「チャイコスフキーの抒情が自分の源泉となっている」と、ラフマニノフが語ったと言われるが、ピアノ協奏曲第二番は、まさしく抒情的。ロシアの作曲家でないと書けないと言われるほど。
名盤は、リヒテル(P)とヴィスロツキ指揮/ワルシャワ国立管弦楽団を推す。
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