キュシュロフスキ作品「トリコロール/白の愛」に見る男と女の「愛」とは

「愛は地球を救う」。この言葉が好きですか?言い方を変えてみよう。「神は地球を救うのか?」。「愛」も「神」も幻想でしかないのでは。
ポーランドの巨匠、キェシロフスキの作品の根底に流れているのは、人は皆、孤独。孤独さから身を守るために幻想としての「愛」を人は求めるが、「愛」は決して平等ではなく、駆け引きなくして交わることはない。それは追いかける立場と、追いかけられる立場の違いがあって、「愛」らしきものが生まれるが、平等になった途端に「愛」らしきものは消え失せていく。
トリコロール三部作のなかでも、この「トリコロール/白の愛」は、もっともユーモラスな味付けがなされた作品。
パリに住むポーランド人の美容師の男が、慣れないフランス暮らしがストレスになり、性的不能になってしまう。フランス人の妻は、それが愛の終わりであると、離婚を申し立てる。トランクに隠れて故郷、ポーランドに戻った彼は、生き生きとして土地買収計画で大金を手に入れて、一財産を築く。そこから彼は別れた妻を取り戻すために、大博打をうって出るが……。
男女の絆がセックスで成り立つことも、崩れることもある。ここでは「愛」の幻想はセクシャリティでもあると定義は付けられている。男は自分が死んだことにして遺言状を別れた妻に届ける。「全財産を与える」。ここでは男が死んだことにより、女が仕掛けられている。その上、遺産が自分に入ってくることに、男の自分への想いを「意外性」として心を揺さぶられる。純粋さを凌ぐ遺産の力。
実にリアリティな「愛」の形が描かれていく。共産国であったポーランドの素っ裸な男女の関係があからさまになる。

●1994年 フランス=ポーランド合作 監督/クシシュトフ・キェシロツスキ 出演/ジュリー・デルビー/ズビグニェフ・ザマホツスキ/他

Oimachi Act./おい街アクト

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