実話を基に描かれたスパイ映画「国家の女リトルローズ」
東西冷戦下のポーランドで自由を求める運動が起きた1967年を舞台にした映画。この時代もユダヤ人を排除していこうという流れが、まだ残っている。ポーランドで民主化運動の思想的リーダーとして著名な作家を隠れ蓑にしている老いた活動家と、秘密警察の使われの身に過ぎない賢くはない体育会系の男と、その彼女(結婚を前提とはしているが)の物語。
その彼女はやがて”リトルローズ”というコード名で、民主家の懐に入っていく。
1960年代末にポーランドで起こった実話を基に描かれる政治サスペンス映画。リトルローズを演じるのは、この映画の時の年齢が32才のマグダレーナ・ボチャルスカ。美しさと知性と官能を備えたリトルローズを余裕の体当たりの演技で熱演している。
エロティックというより、美しい女性としての身体の表現力に優れた女優だ。
この女性をめぐりライバルとなるのがポーランドでも名優といわれているアンジェイ・セヴェランとロベルト・ヴィエンチェヴィチ。
余談になるが、リトルローズのSEXシーンで、激しいばかりの男、秘密警察らしく一方的である。老いた活動家は、対比すると優しいSEXで、リトルローズを包み込むようにしていく。この演出は見事である。2人の男の質とオーラの違いをSEXシーンで巧みに表現している。リトルローズが優しい男性が基本的には好きであり、それだからこそスパイという任務を捨てていき、思想的にも民主化運動になびいていくという流れがある。女心を知ることができる作品でもある。
ポーランドの女性は優しい男性が好きというようなシーンが、ポーランド映画には多い。旧ソ連や、ナチス・ドイツに侵略されて、独裁政治に人間としての安らぎも得ることが少なかった国民のお国柄やスラブ民族の流れをくむ国民性のためなのか。
●2010年ポーランド映画 監督/ヤン・キタヴァ=ブロニスキ/出演/マグダレーナ・ボチャルスカ/アンジェイ・セヴチンアワード/他
●モスクワ国際映画祭最優秀衣装賞/ゴア国際映画祭最優秀女優賞/ポーランド・アカデミー賞最優秀男優賞/他受賞
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