観る人によって違う「愛」。映画『アンナと過ごした4日間』
ポーランド映画はクオリティが高い。この映画の監督、イエジー・スコリモフスキは脚本家、俳優、ボクサー、画家でもある多才な芸術家。1978年カンヌ映画祭でグランプリを獲得した「シャウト」他、「ライシップ」「出発」と、これらで世界の三大映画祭すべてで賞を獲得している。
舞台はポーランドの田舎町。病院の火葬場で働きながら、祖母と二人で暮らしているレオンが主人公。彼の楽しみは、近くの看護師寮に住むアンナの部屋を毎晩、のぞき見すること。
ある日、魚釣りに出かけた先で雨が降り出して家路を急いでいたレオンは、小屋の中で男にレイプされているアンナを目撃する。
そのアンナに対する恋心が彼を大胆な行動にかり立てていく。映画のタイトル通り、アンナの部屋に深夜しのび込み、アンナと時を過ごす。体に触れることもせず、アンナのシャツのボタンを針と糸で縫い直してやったり、アンナの足の爪にマニキュアを塗ったり、指輪を買って指にはめたりと。
最後は窓から出て行くところを警察に捕まってしまうが。
このレオンは、一般的に言われる知恵遅れの中年男。もちろん男になっていない童貞男。性格はヤボったいが、決して悪人ではない。が、女性に関しての愛情表現はまるで子供並み。女性はきっと「キモチ悪~い‼」と言うに違いないだろうが、こういったタイプの男性は意外に多いのも事実。これを純愛のひとつとして受け止めて観ると、映画としては面白いし、ユーモラスでもある。
映像も暗く、美しい風景も出てこないからこそ、孤独、貧しさ、寂しさを強調している。それはポーランドという国の根底にある侵略され続けた悲しさに通じるものか。
●2008年/ポーランド・フランス合作
監督/イエジー・スコリモフスキ
出演/アルトウル・ステランコ、チンガ・プレイス、他
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