誰にも訪れる老いの時。食べる。眠る。性を営む。人間の本能を野性というべきか?エロスと言うべきか?
年老いていくとは?
先が、未来が少なくなること、
働けなくなること。
激しい動きが出来なくなること。
老いた顔、姿になること。
頭もボケてくること。
やっと死を迎えられるという
到達感を伴うこともある。
その趣きは人により異なるが。
「男はつらいよ」の寅さんは、
原作では山の中で
マムシに噛まれて人知れず死ぬ。
自己完結で切腹した三島由紀夫。
麻原は死刑が執行された。
川端康成も自殺した作家の一人。
若い頃の作風と変わり、
晩年は老人と性、老人と死、
エロスと少女などを
テーマに作品を残していった。
「眠れる美女」はその代表作。
この原作をヒントに、
ドイツのヴァディム・クロードが
監督、脚本、製作、主演した映画
「眠れる美女」は、老いた男の考えること、
感じること、思うこと・・・。
実にリアリティに描かれている。
15年前に妻と娘を失くし、
孤独と死と隣り合わせの人生を送っている
金持ちが、友人から
”秘密の館”の話を聞かされる。
そこは会員制で
若い眠った美女と添い寝をする館。
「少女たちに悪いいたずらをなさらないで下さい。眠っている少女の口の中に指を入れようとなさったりすることは、いけません」と
案内するマダムが見透かしたように告げる。
美女は眠らされている。
どんなに揺り動かしても起きない。
全裸の少女と沈黙の一夜。
老人は独り言を語りかけるだけ。
少女には未来がある。
そして健康的ではつらつとして
若さに満ちあふれている。
そんな眠った美女と
添い寝して一夜を明かす。
老人は再び、その館を訪れてしまう・・・。
人生とは、愛情とは、男と女とは、
答えが出ないままに、人は死んでいく。
答えを出さない方がいいのかもしれないし、完全犯罪でないと
愛はあり得ないのかもしれない。
老いるということは
側面も背面も無に近づくこと。
川端康成も人生を悟って
自殺も遂げたのだろう。
1920年から30年のドイツのベルリンに、
このような館が実在した。
プラハ、パリ、ウィーンにもあったことが確認されている。
エロスは一生涯つきまとう。
灰になるまで。
エロスとは
陰と陽が引き合うエネルギーでもある。
男である前に人間であるか?
人間である前に男であるか?
この答えは
男性のエロス度によって変わることも。
「眠れる美女」
2005年ドイツ作品
監督・脚本・製作・主演/ヴァディム・グロウナ
出演/マクシミリアン・シェル、アンゲラ・ヴィンクラー、他
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