ウソっぽいジョン・レノンの作りあげた名盤だ。 戦い疲れたギターを持った兵士とでもいうか
ジョン・レノンには2人のジョンが住む。
躁のジョンと鬱のジョンが。
オノ・ヨーコと別離ていた時に制作されたこのアルバム「心の壁、愛の橋」は鬱のジョンを見る。
オノ・ヨーコとの関係が不安定になると、
ジョン・レノンは活発な音楽活動をする。
のめり込むように。
その関係が修復すると
優しいジョン・レノンが現れてくる。
芸術家とは本来、
そういった傾向が強いようだ。
それがあるから
芸術家になるのかもしれないし、
なれるのかもしれない。
人間らしくていい。
アルバム「心の壁、愛の橋」は、
オノ・ヨーコと離れたことと、
アルバム「ロックン・ロール」の
マスター・テープがフィル・スペクターに持ち逃げされたことと重なった時期で、不安定な精神状態で創り上げるしかなかった、といわれる。
酒におぼれて狂ったようになっていたジョン・レノン。
フィル・スペクターもピストルを撃つなど、錯乱状態になっていた時で
やたら事件を起こしていた2人。
その最中は、
ハリー・ニルソンのアルバムをプロデュースしたり、ポール・マッカートニーとなぜか仲良くしたりと‥‥。
ジョン・レノンは決して偉人ではないだろう。
とても弱い人間であることをオノ・ヨーコが一番、知っているはずだ。
こうして作られたこのアルバムには
エルトン・ジョンも参加。
ジム・ケルコナー(Dr)、
ニッキー・ホプキンス(Key)、
息子のジュリアン・レノン、
ニューヨーク・フィルハーモニーの奏者も参加している。
富と名誉はあっても愛を失ったジョン。このアルバムは4日間で完成されたと伝えられる。
曲もシニカルで悲観的なものが目立つ。
「枯れた道」
「夢の夢」
「愛の不毛」などを聴いていると、
ホームレス状態のような
ジョン・レノンが書いている詩人の世界だ。
救われるのが「ヤ・ヤ」。
ジュリアン・レノンのドラムとジョンのピアノ、ボーカルで、その後の活動休止を予感させるものがある。
インストゥルメンタルの
「ビーフ・ジャーキー」は
U・F・Oを目撃したジョン。
そのイメージの曲らしい。
ジョン・レノンは、
このアルバムが一番嫌いと言うが、
弱々しいジョン・レノンでしか作れないアルバムで、心の奥深くまでジョン・レノンが入りこんでくる、素晴らしいアルバムだ。
オノ・ヨーコへのメッセージ性も感じられる。「助けて下さい、ヨーコさん」と。
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